第9回 頻出テーマ学習(各論編) 〔補講〕環境と科学の倫理 【解説②】地球環境問題とは何か

≪Web版特別講義≫
〔補講〕 環境と科学の倫理


【解説②】 地球環境問題とは何か

実際の問題にあたる前に,基本的な知識を確認しておきましょう。地球環境問題とは何か,いま,どのようなことが問題となっており,どのような意見が出されているのでしょうか。地球環境問題を抽象的に論じると,感情論や精神論に陥ること必至です。冷静かつ具体的に論じるには,地球環境問題について,世の中ではどのようなことが言われているかを知っておくことが大切です。

まず,地球環境問題とは何でしょうか。人間の経済活動を主な原因として生じる,全地球的な自然破壊・汚染の問題と定義しておきましょう。この問題群は,かつて日本において1970年代に生じた「公害」問題とは異なることに注意してください。公害問題は,自然環境の問題には違いありませんが,水俣病などの判例を見ても明らかなように,責任の主体が明確で(チッソという企業,あるいは規制を疎かにした政府),被害の範囲も地域限定的です。

一方,地球環境問題は,責任の主体も明確でなく(経済活動を行なっている人類全員が責任者になっているとも言える),被害も一地域にとどまらず,全地球に広がっており,その被害は数世代あとの人類にも及びます。

さて,地球環境問題には,酸性雨,オゾン層破壊,土壌汚染や大気汚染の問題などさまざまなものがありますが,もっとも典型的かつ深刻と考えられているのが,地球温暖化(global warming)問題です。温暖化が進むと,海水面の上昇や異常気象,洪水・砂漠化,有用な動植物の減少など,人間の生存に深刻な影響を与えると言われています。

地球温暖化の主な原因は,温室効果ガスと呼ばれる(greenhouse effect gas:二酸化炭素やメタンなど)温暖化物質の排出だと考えられており,多くの科学者や政策担当者もそう信じています。二酸化炭素は,人間の経済活動,おもに工業生産や交通において排出され,工業化がすでに終わった国や工業化が進行中の国において大量に排出されています。また,農業においてもメタンガスなどの温室効果ガスが発生しています。このように,温室効果ガスは,人間が経済活動を行なうにあたって必然的に排出されるものであり,経済活動のあり方を変えることなしに,温室効果ガスの排出を減らすことは不可能と考えられています。

1997年に締結され,2005年にようやく発効した「京都議定書」(正式名称は「気候変動に関する国際連合枠組条約京都議定書」)では,各国の温室効果ガスの削減目標が初めて国際的な約束事として取りきめられました。しかし,全世界での二酸化炭素排出量の4分の1を占めるアメリカの不参加,中国やインドなど工業化途上国に削減義務がないことなど,さまざまな問題があり,地球温暖化への包括的な取り組みとしては,まだまだ課題が山積している状況です。


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