第10回講義 【解答例①】契約履行を支持する立場(スターン夫妻の養育権を認める立場)



【解答例①】契約履行を支持する立場(スターン夫妻の養育権を認める立場)

私は契約の遵守と子の福祉という観点からスターン夫妻の養育権を認める考え方を支持する。

まず,そもそも契約順守という規範は,その契約がいちじるしく不合理なものであったり,不利益をもたらすようなものでなければ,どのような場面においても守られるべきである。そして,この契約順守の考え方が認められるならば,この代理母契約の有効性は、自由主義の観点から導き出すことができる。自由主義の考え方によれば、他人に危害を加えない限り何をする自由も妨げられないから、契約の履行によって誰にも危害が及ばない本契約は有効であり、メアリー・ベスは,約束通り産んだ子の養育権を放棄しなければならない。

また,子の福祉という観点からも,本契約の履行は支持することができる。メアリー・ベスは,家計の安定していない状況において,金銭的なメリットを得ることを目的として代理母契約を結んだのであり,一方のスターン夫妻は遺伝的つながりのある子を持ちたいがために契約を結んだ。したがって,子にとっては,もともと子を望んでいたスターン夫妻のもとで養育されるのが子のためになり,また経済的にも恵まれているスターン夫妻の方が子に有益な養育を与えることができると考えられる。

たしかに,妊娠や出産という行為は神聖で尊厳に値するものである。そして,そのことを根拠として,代理母契約自体を不正な行為とみなす反論が想定できる。しかし,神聖で尊厳に値するということから、契約や売買の対象にしてはいけないということにはならない。この契約によって、スターン夫妻は遺伝的につながりのある子を手に入れ、メアリー・ベスは1万ドルという対価を手に入れる。したがって,契約時に強制などの圧力が無かったと考えるならば,この契約は双方にとってデメリットのないものであり,正当な契約であると考えるべきである。(762)


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